2021年度の国内バイオマスエネルギー市場規模(エネルギー供給量を金額ベースに換算)は前年度比約8.3%増の7,261億円(見込み)であった((株)矢野経済研究所調べ)(※1)。バイオマス発電所は燃料の多くを輸入に頼っており、なかでも15年の約46万tから21年に約252万tと輸入が大幅に増加している燃料に「パーム椰子殻(PKS)」がある。11月17日に大阪で開催された「インドネシア・パームバイオマス国際シンポジウム」では、PKS燃料の生産、輸出、バイオマス発電所の動向について講演が行われた。

前回記事→バイオマス発電所の現状~バイオマス発電市場動向(3)

PKSの輸出動向

 ここからはPKSの主要生産国であるインドネシアの輸出市場の現状に注目したい。09~20年のインドネシアのPKS生産量は、CPO生産量の増加にともない増加傾向にある。2020年のPKSの最大の輸出先は日本20万1,910t(1,924万ドル)であり、続いてタイ3万350t(282万ドル)、韓国2万3,850t(217万ドル)となった。Khadikin・インドネシア共和国経済担当調整省パーム開発部長は、「インドネシア政府はPKSをペレット化する加工産業で投資することで、輸出品としてのPKSの付加価値を高めることができると考えています」と語る。

Khadikin・インドネシア共和国経済担当調整省パーム開発部長
Khadikin・インドネシア共和国経済担当調整省パーム開発部長

 PKSはCPOを生産する工程で得られる副産物であるが、世界のパーム油輸出は、インドネシア4,450万t(58%)とマレーシア1,970万t(26%)でほとんどを占めている(20年と21年時点)。インドネシアでは、パーム油やPKSの原料となるアブラヤシのプランテーションの面積は1,638万ha(2019年時点)であり、パーム製品はインドネシア国内総生産の3.5%を占める主要産業の1つだ。プランテーションは、スマトラ島(42%)、カリマンタン島(54%)、スラウェシ島(2%)、その他(2%)などにある。「PKSは、(1)水分が11~13%と少なく、燃えやすい、(2)パーム油の残滓が含まれるため、燃焼に適している、(3)大きさが均一であり、砕きやすい、(4)繊維が含まれているため扱いやすいという特徴があるため、バイオマス燃料として輸出が増加傾向にあります」(Khadikin・インドネシア共和国経済担当調整省パーム開発部長)。

PKS生産量は増加

 「インドネシアのPKS生産量はやや増加傾向にあり、2022年は前年比5%増の1,130万tと試算されています。23年は1,330万t、24年は1,420万tに増加すると予測されています。PKSは生産量のうち22~25%が輸出されますが、PKS輸出量はやや増加傾向にあり、2022年は前年比1%増の248.6万t(22%)となる見込みです。23年は425.6万t(32%)、24年は497万t(35%)と輸出が増加すると予測されています」とDikki Akhmar・インドネシアパームカーネルシェル事業協会会長は語る。

Dikki Akhmar・インドネシアパームカーネルシェル事業協会会長
Dikki Akhmar・インドネシアパームカーネルシェル事業協会会長

 インドネシア全土には、アブラヤシ農園が1,688社あり、最もアブラヤシ農園企業数が多いのは、スマトラ島とカリマンタン島だ。農園数は北スマトラ州351社、西カリマンタン州221州、リアウ州199社、中央カリマンタン州143社、南スマトラ州137社となっている。

 アブラヤシは、デュラ(Dura)種、テネラ(Tenera)種、ピシフェラ(Pisifera)種があり、PKSの性質は種類ごとに異なる。デュラ種はPKSが厚く、テネラ種はPKSが薄く、ピシフェラ種はPKSがない。マレーシアで栽培されている品種は9割がテネラ種だ。

 PKSは、原料となるアブラヤシからCPOを生産する工程で副産物として得られるものであるが、他にも副産物として繊維、廃液、アブラヤシ空果房(EFB)、アブラヤシの幹などが産出される。アブラヤシ果房(FFB)から得られる割合は、CPO23%、PKS6%、繊維26%、アブラヤシ空果房16%、液体残渣8.5%、パーム核粕(PKE)4%、固形物3%、その他13.5%となっている。

 「PKSのバイオマス燃料としての利点は、熱量が高く、水分が少なく、灰分や硫黄の含有量がとても少ないことです」(Dikki Akhmar・インドネシアパームカーネルシェル事業協会会長)。PKSの熱量は1kg当たり20,539kJ、木質チップは同6,721kJであり、PKSは木質チップより熱量が高い。PKSの水分は10.6~18%、木質チップは53.9%とPKSは木質チップより水分が少ない。PKS輸出品の標準規格は、サイズが3~5mm、水分が最大20%、硫黄が最大0.1%、塩素が最大0.1%、不純物が最大0.5%となっている。

PKS流通における第三者認証の課題

 PT. International Green Energyはインドネシア・ジャカルタに本社があり、PKSなどのバイオマス燃料の調達・貯蔵・選別・出荷・販売を行う企業だ。再エネの開発・運営を行う発電事業を行うテスホールディングスのグループ企業であり、リアウ州タンジュン・ブトン港近郊にある敷地面積4万m2のストックパイルからバイオマス燃料を輸出している。

International Green Energy Pte. Ltd. 取締役・伊東亮平氏
International Green Energy Pte. Ltd. 取締役・伊東亮平氏

 PKSを日本に輸入するには、2024年4月以降(2022年12月時点)、第三者認証が必要となる見込みため、GGL認証(Green Gold Label)を2021年に取得した。認証更新の監査では必要書類が40以上あり、輸出事業者が準備するだけでなく、PKSを供給するCPO工場にも同様に書類を要求する必要がある。International Green Energy Pte. Ltd. 取締役・伊東亮平氏は、「第三者認証を取得するためにはCPO工場の協力が不可欠ですが、多くの工場は手間と時間とコストがかかるため、第三者認証の取得に前向きではありません。多くのFIT発電所は、第三者認証が求められる制度の開始にあたり、認証済の燃料を確保できるかどうか懸念しています」と語る。

※1 出典:(株)矢野経済研究所「バイオマスエネルギー市場に関する調査(2021年)」(21年10月28日発表)

(了)
【石井 ゆかり】