2021年度の国内バイオマスエネルギー市場規模(エネルギー供給量を金額ベースに換算)は前年度比約8.3%増の7,261億円(見込み)であった((株)矢野経済研究所調べ)(※1)。バイオマス発電所は燃料の多くを輸入に頼っており、なかでも15年の約46万tから21年に約252万tと輸入が大幅に増加している燃料に「パーム椰子殻(PKS)」がある。11月17日に大阪で開催された「インドネシア・パームバイオマス国際シンポジウム」では、PKS燃料の生産、輸出、バイオマス発電所の動向について講演が行われた。

前回記事はこちら→パーム椰子殻(PKS)輸入が増加~バイオマス発電市場動向(1)

バイオマス発電市場の動向

稼働する発電所は増加傾向

 「PKS、木質ペレット、木質チップなどの『一般木質バイオマス発電』のFIT認定容量は2017年3月まで急増していましたが、18年以降はFIT買取価格が下がったため、近年のFIT認定容量は7~8GWの横ばいとなっています」と(一社)バイオマス発電事業者協会(BPA)副代表理事・谷口博昭氏は語る。一般木質バイオマスを燃料とし、再エネの固定価格買取制度(FIT)認定を受けているバイオマス発電所は全国で196件であり、その内訳は容量10MW未満の中小規模発電所が123件、10MW以上の大規模発電所が73件となっている(22年3月時点)。

(一社)バイオマス発電事業者協会(BPA)副代表理事・谷口博昭氏
(一社)バイオマス発電事業者協会(BPA)副代表理事・谷口博昭氏(オンライン講演)

  一般木質バイオマス発電のFIT認定容量は7.4GW(22年3月)であるが、そのうち稼働している発電所の容量は2.8GW(21年12月)であり、認定を取得しても稼働していない案件も多いが、稼働する発電所は増加傾向にある。「25年までに新たに1.7GWが稼働し、稼働容量は4.5GWになると予測しています」(谷口氏)。

 バイオマス発電容量は21年12月で4.5GWであるが、第6次エネルギー基本計画では、2030年にバイオマス発電を8GW(再エネのうち5%)することを目標としている。「そのうちPKSなどの輸入燃料を含む一般木質バイオマス発電は全体の63%となる4.8GWを占めると見込んでいます」(谷口氏)。

バイオマス発電が直面する課題

 バイオマス発電は今、大きな2つの課題に直面している。1つ目は電力市場で競争力を得るためのコスト削減、2つ目はFIT制度において、持続可能性の確保に関する新たな追加要件を満たすことだ。

 「バイオマス発電は、再エネの他の発電方法に比べて本来コストが高いです。一方、PKSなど輸入バイオマス燃料価格や輸送費の高騰、円安による値上がりの影響も受けているため、これらに対処できるように、成長の早い木を原料とした新たな低コスト燃料の導入、発電所の運営の効率化、設備や建設コストの見直しによるコスト削減に取り組んでいます」(谷口氏)。

 加えて、FIT制度では、バイオマス燃料の持続可能性の確保に関する新たな追加要件として、第三者認証の取得、食品と競合しないこと、原料の栽培から燃料を利用するまでの温室効果ガス排出総量「ライフサイクルGHG」の基準(※3)を満たすことが求められる見込みだ。PKSが対象となる第三者認証には、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」「持続可能なバイオ燃料のための円卓会議(RSB)」「グリーン・ゴールド・ラベル(GGL)」「国際持続可能性カーボン認証(ISCC)」がある。「2024年3月までの経過措置の期間(2022年12月時点)が終了すると、持続可能性の確保に関する第三者認証を取得しなければ、FIT燃料としてPKSを輸入できなくなるため、大きな問題です」(谷口氏)。

つづきはこちら→バイオマス発電所の現状~バイオマス発電市場動向(3)

※1 出典:(株)矢野経済研究所「バイオマスエネルギー市場に関する調査(2021年)」(21年10月28日発表)

※3 2021年以前に認定を受けた発電所には適用されない。制度開始の日程は協議中。

(つづく)
【石井 ゆかり】