輸出時のパーム油プランテーション基金の課税に関して、インドネシア財務省によって新たな規制が実施されたことで、インドネシア国内のパーム油産業にとってますます重荷になっている。コロナ禍でインドネシアの経済が低迷しており、パーム油産業は回復力が優れているものの成長できるように政府の支援を得る必要があるという。

輸出時の課税による影響

 インドネシアのパーム油産業のオブザーバーであるIgnatius Ery Kurniawanによると、インドネシアのパーム油産業は他国が輸出する植物油との市場競争にさらされているため、重荷となる規制があることで競争力の低下化につながるという。

 「粗パーム油(CPO)とその派生品の価格が上昇することで得られる利益により、インドネシアのパーム油産業は世界市場での競争力を高めやすくなるはずです。インドネシア政府の課税による負担が大きすぎる場合、パーム油産業の競争力に悪影響を与えるでしょう」(Ignatius Ery Kurniawan)。

 インドネシアでは、パーム油の原料となるアブラヤシ農園の土地の42%以上を小規模農家が所有している。あまりにも高額な税金が課されると、アブラヤシの果実(FFB)の販売価格が圧迫され、FFBの買取価格が過去2年間低下していたため、アブラヤシ農家は再び損失を被るという。

 「インドネシア財務省は、パーム油産業全体を見渡して賢明に判断する必要があり、主に小規模農家によって管理されるアブラヤシ農園産業を犠牲にしてはなりません。今月、政府による規制が実施されると、CPOとその派生品の価格は再び下落し、アブラヤシ農家数百万件に損害がおよぶでしょう。インドネシアのパーム油産業は川上から川下に至るまで、バランスのとれた規制により常に政府から支援を受けるべきです」(Ignatius Ery Kurniawan)。

インドネシア政府のパーム油政策

 CPO製品に高い税金と手数料を課すと、バイオディーゼル産業を含む川下の産業は、原材料が安価になることでプラスの影響を受けるだろう。ただし、バイオディーゼル製品の競争相手には、価格が下落している石油由来の燃料も含まれる。そのため、パーム油の価格が下がっても、バイオディーゼル製品の競争力にプラスの影響を与えることはない。

 2022年末はCPO価格が上昇傾向にあり、何百万人ものアブラヤシ農家はアブラヤシの果実(FFB)の販売価格を上げることで利益を得ることができるだろう。しかしCPO価格が下がれば、過去2年間の肥料不足と管理不足により、アブラヤシ農家は再び低迷するだろう。

 「すべてのパーム油業界関係者にとって最善となる方法を見つけなければなりません。インドネシアのパーム油産業はすべての関係者が互いに支え合い、協力し合わなければなりません」(Ignatius Ery Kurniawan)。

 一方、アブラヤシ生産農家組合(SPKS)事務局長のMansuetus Dartoは、CPO価格が上昇しFFB価格が上昇したときに、パーム油プランテーション基金管理庁(BPDP-KS)によりパーム油輸出時の課税が引き上げられると、農家の収益が悪化すると述べた。パーム油輸出時の課税は、パーム油巨大企業が生産している、軽油にバイオディーゼルを30%混合した「B30」の補助金に使われている。

 「計算によると、わずか55ドルの輸出時の課税で、農家からのFFB買取価格は1kg当たり150ルピア引き下げられます。また、55~255ドルの輸出時の課税を行うと、FFB価格が1kg当たり約500ルピア下がるため、農家に悪影響が出ます。農家はFFB販売価格から利益を得ることができず、この輸出政策はパーム油巨大企業の利益のためだけのものと見られます」(Mansuetus Darto)。

 さらにMansuetus Dartoは、この政策はコロナ禍に施行されたものであるため、見直しが必要だと述べた。アブラヤシ小規模農家が、輸出時のCPO課税の引き上げの影響に関する協議に関与しなかったことも残念に感じているという。

 「政府が『B40』に移行する目標を追求するための政策であり、インドネシアのアブラヤシ小規模農家にとって有益な政策ではありません。パーム油プランテーション基金管理庁はこの政策を直ちに再評価することが望まれます」(Mansuetus Darto)。

出典:InfoSAWIT 12月7日付