パーム油価格が下落
世界では、パーム油の最大の輸入国はインドと中国だ。昨年はコロナ禍による不況であったが、パーム油価格が上昇傾向にあり、売り手市場だった。一方、今はパーム油価格が下がり、買い手市場となっている。
インドネシア政府は4月下旬、インドネシア国内で食用パーム油価格が高騰したことを受けて、パーム油原料とその派生品の輸出を停止した。そのため世界市場で混乱が起こり、パーム油の需要は、代替となる菜種油やヒマワリ油などのほか植物油に移った。世界では、代替となる植物油の供給網ができて、パーム油がそこに入る余地が狭まった。そのため、インドネシア政府が輸出禁止措置を撤廃してもパーム油の需要は多くは戻らず、以前に比べて価格は値下がりしている。
「粗パーム油(CPO)は1年などの長期間の購入契約がなされます。そのため、今の植物油の需要はしばらく変わらず、現時点では多くのCPO需要を見込むことはできません。この傾向はしばらく続くでしょう」(PT ZANN CAPITAL INTERNATIONAL共同創設者・Lutfi Gaffar)。

パーム油輸出制限を継続
インドネシアでは、企業はパーム油の予定輸出量の20%をインドネシア国内で販売しなければ輸出できないという国内(市場)供給義務(DMO)の規制が続いている。パーム椰子殻(PKS)には、この輸出制限の規制は適用されない。
「インドネシア国内で食用パーム油が高騰したため、インドネシアの政権は支持率が低下するのを回避する目的で、当時のムハンマド・ルトフィ商業大臣が急場凌ぎで3月に輸出制限を開始しました。この輸出制限は、終わりが見えない状態が続いています」(PT ZANN CAPITAL INTERNATIONALゼネラルマネジャー・Abdulla Aziz)。

現在、インドネシアでは、食用パーム油の価格は高騰する前に比べると高いが、少しずつ下がっているという。Abdulla Azizは、「食用パーム油が高騰したのは、偶然が重なって一時的に起こったことで、政府の介入がなくても時間が経てば収まった可能性もあります」と語った。
【石井 ゆかり】