インドネシアパーム油協会(GAPKI)は、パーム油の小規模輸出企業が、パーム油の国内市場(供給)義務(DMO)政策において、輸出量のうちパーム油生産者が国内市場に供給する割合を20%から30%に引き上げるというインドネシア政府の決定に従うのが難しいのではないかと懸念している。パーム油輸出量の20%を国内市場に充てることで、国内のパーム油不足を補い、食用パーム油の価格を安定させるためには、十分であると見られている。

 パーム油の国内市場(供給)義務(DMO)として輸出量の30%を国内市場に供給することは、2022年3月10日から適用されている国内市場に供給されるパーム油の割り当て(DMO)と国内価格義務(DPO)に関するインドネシア商業大臣令(Permendag)No.170 / 2022において規定されている。粗パーム油(CPO)および精製、漂白、脱臭されたパーム油(RBDPO)を輸出する生産者に対して、輸出するパーム油の30%を国内供給に割り当てることが適用されると規定されている。

 GAPKI事務局長のEddy Martonoは「輸出されるパーム油の国内市場に供給される割合が20%から30%に増加すると、小規模輸出企業が義務をはたすことが困難になるのではないかと懸念しています」と話している。

 Eddy事務局長は3月14日、「ムハマド・ルトフィ商業大臣が3月9日に発表した、2月14日~3月8日の期間中の推定消費量が32万7,321tであることを見越して、41万5,787tの食用パーム油を配布したという発表に基にして考えると、パーム油総輸出量の20%を国内市場に割り当てる政策ですでに十分でした」とインドネシアの新聞、Investor Dailyの取材で語った。

 インドネシア経済法律研究センター所長・Bhima Yudhistiraは、国内の食用パーム油の需要を満たすため、国内市場への供給割合を30%に高める政策は必要ないという。食用パーム油が不足しているのは、国内市場へのCPO供給量が足りないからではなく、バイオディーゼルと食用油の生産の両方にCPOの供給を割り当てる必要があるためだとしている。

 「インドネシアで食用パーム油の供給が不足しているのは、軽油に30%のバイオディーゼルを混ぜる『B30』の生産義務政策の結果として、CPOの国内消費量が増えたためです。政府は新しい政策を実施する前に、輸出量の20%を国内市場に供給する政策を行ったことについて、正確に評価する必要があります」(Bhima経済法律研究センター所長)。

 元・インドネシア植物油産業協会(GIMNI)常務理事・Sahat Sinagaは、同協会が国内市場への割り当て量を20%から30%に引き上げるという政府の決定に反対したと話した。「国内の需要を満たすためには、輸出量の20%を国内市場に供給する政策で十分でした。食用パーム油が不足しているのは、供給が足りないからではなく、流通に問題があるからです」(Sahat元・常務理事)。

パーム油輸出が中断される可能性

 インドネシアのパーム油農業ビジネス戦略研究所(Paspi)事務局長・Tungkot Sipayungは、パーム油の国内市場(供給)義務が適用されることで、パーム油の輸出が妨げられる可能性があると話した。輸出企業にとって、この政策に従うことがパーム油を輸出する要件になっているためだ。

 Tungkot事務局長は、「パーム油の生産者と輸出者は国内市場(供給)義務に従うことでのみ、製品を輸出できます。このような方針を続けていると、パーム油の輸出が影響を受けます。輸出量の20%を国内市場に割り当てるようになってから1カ月以内に、パーム油の輸出量は減少しました。世界市場でパーム油価格が上昇している恩恵を受けることができない可能性があります」とInvestor Dailyの取材で語った。

 Tungkot事務局長によると、この政策が輸出の要件とされていなければ問題ないという。「たとえば、インドネシアのパーム油総生産量が5,100万トンで、国内市場への供給割合が20%の場合、食用パーム油の生産に1,000万トンが使えるようになり、国内のパーム油総消費量が増えます。一方、パーム油(食用油を含む)の国内総消費量は2,000万トンです」と話した。つまり、輸出できるパーム油はまだ約3,000万トンあるということだ。

 「とくに輸出企業から食用油業界の企業に対して、付加価値税(PPN)を含め、CPOの国内価格義務を1kg当たり9,300ルピアとする場合、国内市場(供給)義務政策は理不尽になる傾向があります。CPO生産者に依存している食用パーム油工場にCPOを輸送する費用は誰が負担していますか。たとえば、サプライヤーが北スマトラ州のベラワンでCPOを購入し、東ジャワ州のグレシックに輸送する場合、1tあたりの輸送費はいくらになりますか。このことを考えると、CPO生産者や輸出企業は1kg当たり9,300ルピアで販売し続けるでしょうか。利益を上げられない可能性があると思いませんか」(Tungkot事務局長)。

 このような状態では、CPOや食用パーム油は輸送や輸出ができずに、蓄積される可能性がある。Tungkot事務局長は、「その後、密輸出の原因となる可能性があります」と結論付けた。

出典:インドネシアパーム油協会(IPOA) 3月28日付
   (Investor Dailyより。画像:Kompas.com)