インドネシアでは、食用パーム油の需給がひっ迫し、価格が高騰している。食用パーム油の需要の約30%にあたる量が不足しており、インドネシア政府がパーム油の国内市場(供給)義務(DMO)政策を強化させても需要に供給が追い付かないと予測されている。

 インドネシア商業大臣のMuhammad Lutfiは3月9日の記者会見で、食用パーム油の流通は順調であり、貯蔵量は豊富にあると発表した。しかしこれは実態にそぐわず、インドネシアでは、食用パーム油が品薄状態で手に入れるのが難しい状態だ。

20182019202020212022
食用油5.89.868.428.939.60
油脂化学品1.201.051.691.792.16
バイオディーゼル6.45.837.237.708.83
国内合計13.4016.7517.3518.4220.59
インドネシア国内消費向けの粗パーム油(CPO)の割り当て(百万t)
(出典:インドネシアのパーム油協会(IPOA)、2019-2022)

 2022年のインドネシア国内の食用パーム油需要量は年間960万tであり、1日当たりの需要量は2万7,000tであるが、実際には1日当たり1万8,000tしか供給されていない(インドネシア商業省、2022年)。食用パーム油の需要量の32%にあたる9,000tが毎日、不足している。

通年の
目標量
毎月の
目標量
毎日の
目標量
流通量
20229,600,000800,00026,66718,07867.89
20218,925,200743,76724,79218,07872.92
20208,420,000701,66723,38918,07877.29
20199,860,000821,66727,38918,07866.00
2022年の食用パーム油の割り当て目標量と流通量(t)
(出典:IPOAおよび商業省、2022年)

 粗パーム油(CPO)の食用油への割り当て量は2019年以降、変わっていない。食用パーム油の1日当たりの需要量は約2万6,000~2万7,000tであるが、実際の供給量はわずか1万8,000t(2022年の商業省データによる)であり、需要を満たしていない。

食用油の目標量に対する流通量2022年
左図:食用油の目標量に対する流通量(%)(青:目標量、赤:流通量)
右図:食用油計画における1日あたりの目標量と流通量(t)(青:目標量、赤:流通量)

 Muhammad Lutfi大臣は9日、「(食用パーム油の)貯蔵量は豊富です」と発表したが、実際には流通はひっ迫している。インドネシア植物油産業協会(GIMNI)常任理事のSahat Sinaga(CNBC、2022)は、食用パーム油生産企業6社がCPO供給を受けなかったために操業を停止していると話している。この発言から、食用パーム油向けにCPOが十分に割り当てられていないことがわかる。

 パーム油の輸出と流通は順調になされておらず、この問題は商業省の政策が原因となっている。商業省は、食用パーム油4億1,500万Lがインドネシア国外に販売されていることを発表した。一部の関係者は非常に多くの供給を受けて在庫を抱えているが、国民は2Lの食用パーム油を購入するために列に並んでいる。

 国内消費がパーム油生産量のうち40%を超えたため、インドネシア政府が国内市場(供給)義務(DMO)政策として、パーム油生産量の30%を国内市場に流通させることを義務化させても問題が解決しない可能性がある。

出典:InfoSAWIT ENGLISH 3月14日付
著者:Padjadjaran大学の臨時講師兼インドネシアの専門家同盟会長・Memet Hakim