再生可能エネルギーの1つであるバイオマス発電のエネルギー効率は20%前後であるが、電力とともに発電設備からの排熱を利用する「コージェネレーション(熱電供給)」を用いることでエネルギーを無駄なく使い、エネルギー効率を高めることができる。バイオマス発電におけるコージェネ利用の現状について、(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター普及推進部長・松上哲也氏に聞いた。‎

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コージェネを利用したバイオマス発電

 コージェネを利用したバイオマス発電の事例として、松上氏は「製材工場では、端材や木屑を燃やして水から蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して発電し、蒸気の熱を木材の乾燥に使っているところも多くあります」と語る。電力は遠方まで送電線を通して運ぶことができるが、温水や蒸気などの熱は新しく配管を設置するハードルが高いため、遠方に運ぶことは難しく、熱を使う場所に設備を備える「地産地消型」となる。

コージェネレーションの木質バイオマスなどの利用
(出典:コージェネ財団)

 欧州では、木材チップなどバイオマス焼却炉において、熱エネルギーを熱媒油で回収し、その回収された熱でフロンなどの有機媒体を蒸発させ、その蒸気でタービンを回転させて発電を行う「有機ランキンサイクル(ORC)」と呼ばれる仕組みを用いることで、バイオマスコージェネとして有効活用している事例があるという。

バイオマス発電におけるコージェネ導入の注意点

 「コージェネを導入するときは、さまざまな状況でも柔軟に対応できる設計をすることがカギとなります。設計したときに想定したよりエネルギーの需要が多いと機会損失となり、想定より需要が少ないと設備過大になります。そのため、設備の稼働率が当初の計画から変わってしまった場合にも対処できるように設計する柔軟性が必要です」(松上氏)。前編はこちら。

(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター普及推進部長・松上哲也氏
(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター普及推進部長 松上 哲也氏

 加えて、バイオマス発電は、輸入バイオマス燃料を用いる場合は燃料の品質安定リスク、為替変動リスク、紛争など国際情勢による地政学的リスク、国際基準の変更などによる制度的リスクなどを回避することが課題となる。一方、国内で燃料を調達する場合でも、調達リスクや設備の稼働安定リスクなどに対処する必要がある。

 コージェネの導入は、設備を導入するコストをメリットが上回るかどうかが判断の決め手となる。コージェネで用いる発電システムは、非常用発電機などと比べて初期導入費用や維持管理費用が膨らみやすいが、電力とともに熱を利用できることは省エネ性や経済性においてメリットとなる。経済産業省の「第6次エネルギー基本計画」では、コージェネは省エネや再エネの調整力として用いるほか、災害時のエネルギーとして活用できて、地域経済を活性化する役割があると位置づけられている。コージェネのメリットである災害対応に関しては、非常用発電機とコージェネを組わせて導入することで、常用時の省エネ性と停電時のレジリエンス性の両立を確保しやすい。

 近年では、「熱」と「電気」を取引するエネルギーサービスプロバイダという形態でコージェネを導入するケースが増えつつある。エネルギーサービス会社が投資してコージェネ設備を導入し、テナントやオーナーにイニシャルレスでサービス提供する仕組みだ。故障や経年劣化のリスクやメンテナンスの手間を負わずに導入できる点はメリットとなる。導入の際に大きな設備投資の負担がなくなることで今後のコージェネ普及を促進することが期待されている。

再エネにおけるコージェネ活用

 バイオマス発電などのコージェネは、蓄電池とともに再エネの調整力としても注目されている。たとえば10kW程度の余力がある小規模な分散型の発電所であっても、電力の需要と供給のバランスを保つ「アグリゲーター」がこれらを100件集めることができれば、1,000kWの調整力として活用できる。たとえば冬場の午前6時など日の出前で太陽光発電などの再エネの発電量が少ない時間帯に、各発電所に対して発電出力を高めるよう指示を出すことで、調整力となる電力を集めることができる。再エネの普及が進むなか、政府では、電力の需給バランスを保つための制度設計が進められているという。

 「コージェネレーション」という言葉が広く使われるようになる前から、製紙、製鉄、化学など重厚長大産業の大規模工場では、「自家発電」により発電時に発生する熱を生産プロセスで有効活用してきた。また、製紙工場では木材チップから紙をつくってきたため、パルプの製造時にできる廃棄物などで自家発電を行い、発電時につくり出した蒸気を工場で利用してバイオマスコージェネとして活用してきた。松上氏は「2050年にカーボンニュートラルを達成するまでの準備段階(トランジション期)である今後の約30年においてコージェネレーションの役割はますます重要性を高めており、バイオマスを含めたさまざまなグリーンエネルギーの活用に大きな期待が寄せられています」と語っている。

(了)
【石井 ゆかり】