再生可能エネルギーの1つであるバイオマス発電のエネルギー効率は20%前後であるが、電力とともに発電設備からの排熱を利用する「コージェネレーション(熱電供給)」を用いることでエネルギーを無駄なく使い、エネルギー効率を高めることができる。バイオマス発電におけるコージェネ利用の現状について、(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター普及推進部長・松上哲也氏に聞いた。‎

エネルギーを現場で無駄なく使う

 再生可能エネルギーの1つであるバイオマス発電のエネルギー効率は20%前後であるが、発電時の余った熱も無駄なく活用する「コージェネレーション(熱電供給、以下、コージェネ)」を用いることで50~80%前後まで高めることができるとされる。(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター普及推進部長・松上哲也氏は、「ショッピングモールなどの商業施設、工場、温浴施設など熱エネルギーを使う施設の近くにコージェネ設備がつくられており、温水や蒸気などの熱をつくった場所で使うオンサイト型が普及しています」と語る。日本では、海外と比較して100kW以下の小規模な設備としてコージェネも多く利用されている。

省エネルギー・CO2排出削減
コージェネレーションで発電時の余った熱も無駄なく活用する
(出典:コージェネ財団)

 従来の大規模な発電システムのエネルギー効率は40%前後といわれている。燃料を燃やしたときに発電所で得られるエネルギーが100%とすると、そのうち約40~60%は電力として取り出して利用され、残りの約40~60%のエネルギーは廃熱として捨てられる。そこで、発電をしながら廃熱も無駄なく活用するコージェネにより、エネルギーのうち約75~90%を電力と熱として取り出し、現場で使うことができる。

(一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター普及推進部長 松上 哲也氏

 欧州や中国では、小規模発電所のみでなく中規模発電所や大規模発電所でも、コージェネにより暖房用の温水が地域に供給されている。とくに中国東北地方、欧州北中部など寒い地域では、各家庭に暖房器具をつけるのではなく、地域エネルギー供給を利用していることも多い。一方、日本では、広域に温水を供給しようとすると温水管を道路に敷設する際などの法規制や建設費用が課題となり、住宅向けに広域に熱供給することは現状では難しい。加えて、日本では地域にエネルギーを供給する場合には、継続的かつ安定的に供給することが義務化されているため、停電時などインフラが止まりやすい諸外国に比べて、システム構築に関わるコスト負担が大きいことも課題となり、住宅用ではなくオフィスや商業施設への地域冷暖房など業務用に限定されている。

導入分野(出典:コージェネ財団HP)

コージェネを利用したバイオマス発電の事例

 1959年に操業を開始した王子製紙(株)富岡工場(徳島県阿南市)が挙げられる。この工場では、蒸気タービンを回転させて発電し、それらの熱を紙の乾燥に使ってきたが、2008年にバイオマスボイラを導入した。工場の全燃料消費量のうち、約50%をパルプをつくるときに廃棄物として回収されるパルプ廃液(黒液)、約25%を廃プラでまかなっており、その他に木屑、RPF(※)、製紙スラッジ(製紙汚泥)、石炭を利用している。コージェネシステムのエネルギー総合効率は約65%だという(以上、コージェネ財団HPより)。‎
 「安曇野バイオマスエネルギーセンター」(長野県安曇野市)では、間伐材や製材所で出る端材や木屑など年間25,000tの木質バイオマスを用いて、発電出力1,960kWのバイオマス発電を行うとともに、発電設備から排出される熱をトマト栽培ハウスの暖房に使っている(以上、エア・ウォーター(株)ニュースリリースより)。‎

(つづく)
【石井 ゆかり】

※ リサイクルが困難な古紙と廃プラスチックを混ぜた固形燃料。

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