インドネシアのパーム産業
インドネシア経済において、農業部門は重要な役割を担っている。農業部門は、2018年のインドネシア国内総生産の約12.81%を占め、加工産業や卸売・小売業、自動車・自動車修理業に次ぐ3番目の規模だ(※1)。
スイス人の51.6%が、インドネシアと欧州間の経済活動を拡大する「インドネシア―欧州包括的経済連携協定(IE-CEPA)」を支援するのに合意したことからも、インドネシアはスイスなどの欧州諸国との協力体制を築いていることがわかる(※2)。この協定により、インドネシアのパーム油とその派生品を含む製品の貿易を拡大できる機会が得られている。インドネシア工業省国際セキュリティ・地域・工業アクセス長官・Eko SA Cahyantoは21年3月、「IE – CEPAの締結により、インドネシアと欧州自由貿易連合(EFTA)における多くの部門の議論を完了したと考えています」と話した。
パーム油部門の大規模な下部組織は、1970年代後半から発展してきた。インドネシア農業省研究開発庁によって2005年に発行された実用的な文書「インドネシアにおけるパーム油農業ビジネス開発の展望と方向性」には、1970年代後半からのパーム油産業の発展の経緯と2010 年までのビジネス開発の見通し、25 年までの方向性が書かれている(※3)。
移民が携わるパーム油産業
経済活動には、第一次産業、第二次産業、第三次産業の3つの分野があり、この3つは互いに関連している。パーム農園企業は、製造業に原料を供給する事業を行っているため、天然資源の採取や収集を行う素材産業と定義されている第一次産業に属する(※4)。
パーム油の消費量は、過去10年間の世界市場における年平均増加率が約8〜9%となっている。今後も安定した需要があり、植物油の代替燃料となるバイオディーゼルと同様に需要が増加する可能性もある。パーム油の消費量が増加しているのは、世界の人口が増えて食品やショートニング、薬局、化粧品における油脂化学製品の需要が増えており、なかでもほかの植物油に比べて競争力のあるパーム油が多く用いられていることが原因である。
油脂の専門調査誌「オイルワールド」によると、パームが原料となる製品の消費量は、世界市場においてここ数年間、増え続けている。その規模は小麦油、コーン油、ココナッツ油などほかの植物油を使用する産業を圧倒している。
パーム油の消費量は04年以降、世界の植物油市場のなかで最も多く3,000万トンに達しており、年平均増加率は8%だ。これは、大豆油の消費量約2,500万トン、年平均増加率3.8%を上回る。そのほかに、ヒマワリ油の消費量は約1,150万トンだ。
以上のデータから、パーム油はインドネシアの主力部門であり、インドネシアは世界が求める産油国であることがわかる。利害関係者や農園主にとって興味深いビジネスであることを示すパーム油市場の規模は、1970年から2015年にかけて大きく増加した。
パーム農園と移民
インドネシアでは、島の人口の偏りを防ぐため、ある島から別の島への人の移民を行ってきた。過密となった島の人口を減らすだけでなく、ジャワ島の貧困を減らすことも目的だ。移民先の地域にはまだ人の手が入っていない森林があるため、移民政策により、農園地域での雇用が生まれると考えられている。
インドネシアでは、19世紀初頭にオランダにより移民が始まった。当初は、ジャワ島の人口を減らし、スマトラ島の農園に労働者を供給するためであった。しかし、この計画はオランダ植民地時代末期(1940年代)には徐々に衰退していった。スカルノの時代、つまり第二次世界大戦の20年後に食糧問題や経済問題を解決するためにインドネシアが独立した後、再びこの計画が実施されたと言われている(※5)。
1929年のピーク時には、強制栽培制度(Cultuurstelsel)の契約労働者26万人以上がスマテラ東海岸に連行された。そのうち23万5,000人はジャワ島出身であった。新参者にとってプランテーションの仕事は大変な労働であり、誰かが会社との労働契約をキャンセルするように頼んだ場合、労働をするよう罰せられる状況だった。
スマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島、そしてパプア州の一部などジャワ島以外のほとんどの人々がプランテーション部門に依存している。国の政策により移民であった人々は、パーム油産業で働いている。
※1 出典:Publikasi Statistik Kelapa Sawit Indonesia, Badan Pusat Statistik, 2018
※2 出典:indonesia.go.id
※3 出典:Vready Roeslim, “Prospek dan Arah Pengembangan Agribis Kelapa Sawit di Indonesia”、 Badan Penelitian dan Pengembangan Departemen Pertanian, 2005
※4 出典:lifepal.co.id
※5 出典:id.wikipedia.org
<プロフィール>
カリスマント
スマトラ島の南スマトラのムシ・ラワス・ウタラに住む移民の子ども。現在、Program Magister Komunikasi dan Penyiaran Islam、Universitas Islam Negeri(UIN)Sunan KalijagaYogyakartaの学生として、移民の生活とパーム油産業に関する環境と社会を見つめている。本記事の原題は「Meneropong Masa Depan Transmigran Melalui IndustriSawit」であり、持続可能なパーム油について議論するSawitFest 2021のエッセイコンテスト部門にノミネートされた。
出典:InfoSAWIT 1月6日付