インドネシア主要輸出品のパーム油
インドネシアパーム油農園基金代表・Eddy Abdurrachmanが12月1日、インドネシアパーム油会議(IPOC2021)で「インドネシアの持続可能なパーム油産業のためのパーム農園再植林プログラム」について講演した。
2020年のインドネシアの経済成長率は、コロナ禍により前年比+2.07%であったが、インドネシア政府による経済回復政策などにより、21年前半は同+3.7~4.5%となり、22年前半は同+5.2~5.8%まで回復すると見込まれている。インドネシアの2020年のパーム油の輸出高は229億7,000万ドル(前年比+18.43%)で、非石油およびガス輸出総額の14%を占める。そのため、コロナ禍でのインドネシアの経済回復は、パーム油産業の成長による影響を受けている。
パーム油産業の政策
インドネシアは世界のパーム原油(CPO)の約6割を生産している。インドネシアのパーム油生産量は20年に4,829万トンであったが、25年には5,877万トンまで伸びると予想されている。インドネシアのパーム油産業の主な政策は、「生産者の保護」「CPO価格の安定化」「流通工程の強化」だ。
まず生産者の保護政策では、小規模農園の生産性を向上させる「パーム農園再植林プログラム(PSR)」、インドネシアパーム油データベースの改善、種子の品質やプランテーション技術の向上、生産・流通コストの効率化、ISPO認証取得の支援、生産性の向上と持続可能なプランテーション運営に向けた教育計画が行われている。
次にCPO価格の安定化政策では、国内市場を創出し過剰在庫を防ぐ「バイオディーゼルプログラム」の実施、国内外市場の拡大を目指すパーム油の利用促進・擁護、パーム油政策を強化し付加価値の高い派生品を開発するための市場・製品調査が行われている。
流通工程の強化政策では、パーム油をバイオ炭化水素燃料に転換する研究開発、油脂化学産業の流通工程に関する研究支援がなされている。
パーム農園再植林プログラム

(クリックで拡大、IPOC2021、インドネシアパーム油農園基金代表・Eddy Abdurrachmanの発表資料より)
パームの木は20年前後で収穫量が減り始めるため、収穫量が減った木を伐採して植え替えることが必要だ。一方、インドネシアのパーム油の約30%は240万件の小規模農園により生産されているが、資金不足で植え替えができない小規模農園も多い。インドネシア政府は、資金不足で植え替えができない小規模農園に対してPSRにより再植林を実施することで、小規模農園の生産性向上を目指している。
インドネシア政府は16年9月30日から21年までに、PSRにより6兆1,700億ルピアの予算を用いて、10万2,209農園(23万4,392ha)において再植林を実施した。PSRが必要な農園は200万haにおよぶと推定されている。
PSRは収穫量が減ったパームの木を植え替えることで、新たな農園の開墾のための森林伐採を防ぐことも目的だ。PSRにより再植林が行われた農園は、「インドネシアの持続的なパーム油(ISPO)認証」を再植林後の最初の収穫で取得することが求められている。
【石井 ゆかり】