環境先進都市」として脱炭素の取り組みを積極的に行っている北九州市。今年4月には北九州市を含む北九州都市圏域※が環境省から「脱炭素先行地域」に選定されるなど、その取り組みは高く評価されている。北九州市環境局グリーン成長推進部再生可能エネルギー導入推進課に北九州市のこれまでの取り組みや今後の課題などを聞いた。

産学官連携や庁内横断的な検討(つづき)

 ――今後の課題については。

 再エネ導入推進課 ウクライナ情勢の長期化など、世界的な情勢の変化によるエネルギー価格および資材価格の高騰や、円安の影響を受け、太陽光パネルも一時期に比べて価格が上昇しています。また人件費も含め、当初の想定より各種価格が高騰していますので、現在のところ、これらの状況を踏まえつつ試行錯誤しながら進めているという状況です。

 また、事業の推進にあたっては、関係者の理解を深めていくことも重要です。本市では、市長を本部長とした庁内横断的な組織である「北九州市グリーン成長庁内推進本部」を5月末に設置しました。そのなかで政策的な意思決定を行うとともに、本部の下に分野ごとの課題事項を議論するプロジェクトチームを設け、実務担当者間での合意形成の迅速化を図っています。

 一方で、民間企業に対しては、脱炭素の取り組みに対して関心を示してもらったうえで、主体的に取り組んでいただくための意識づけが必要になってきます。北九州市には公害を克服した歴史があり、そうした背景から市内には環境に対する意識が高い企業が多いという印象があります。そのため、そういった企業と歩調を合わせていけるように市としても事業を進めていかなければなりません。

 現在、SDGsや脱炭素の取り組みは企業が経営を行ううえで必要不可欠です。北九州市では「北九州SDGs登録制度」を設けています。SDGsの達成に寄与する企業がこの制度に登録することで、それらの企業の取り組みを市のホームページなどに掲載するなど「見える化」し、地域のSDGsの取り組みの誘発・加速を図ります。その結果、多くの企業がSDGsや脱炭素の視点を経営に取り入れることで持続可能な成長につなげていただき、それを以って、地域の自律的好循環の実現を目指します。

 また、昨年12月からは新たに「北九州市脱炭素電力認定制度」を開始しました。同制度は再エネ100%電力など、脱炭素電力を導入した市内企業を市が認定・公表する制度で、これまでに24社32施設(10月11日現在)を認定しており、認定企業全体で約4万2,300tのCO₂削減に貢献しています。認定企業には「認定ステッカーやロゴマーク提供」「市のホームページやSNSでのPR」を行うほか、「市が行っている一部の助成制度における審査時の加点」などの特典も設けています。さらには、先着100社には「脱炭素先進企業」という特別な認定も行っています。

 乗り越えるべき課題が少なからずありますが、これらの取り組みを通じて、「再エネ100%北九州モデル」を普及すべく、地道に一歩一歩前進していきたいと考えています。

(了)
【新貝 竜也】