「環境先進都市」として脱炭素の取り組みを積極的に行っている北九州市。今年4月には北九州市を含む北九州都市圏域(※)が環境省から「脱炭素先行地域」に選定されるなど、その取り組みは高く評価されている。北九州市環境局グリーン成長推進部再生可能エネルギー導入推進課に北九州市のこれまでの取り組みや今後の課題などを聞いた。

産学官連携や庁内横断的な検討

 ――風力発電にも力を入れています。

 再エネ導入推進課 2011年から広大な産業用地と充実した港湾施設を有する若松区響灘地区で、風力発電などのエネルギー関連産業の集積を目指す「グリーンエネルギーポートひびき」事業を進めています。16年には響灘の港湾区域において洋上風力発電を行う事業者を公募し、17年に事業者(現在の「ひびきウインドエナジー(株)」)を選定しました。この事業では、最大約220MWの発電を行う港湾法初の大規模な洋上ウインドファームの設置が予定されています。また、その先の響灘一般海域においても、洋上風力発電の導入に向け、再エネ海域利用法に基づく促進区域への指定を目指しています。現在、導入可能性調査を行うとともに、基礎情報の収集や地元関係者との調整などを国および福岡県と連携して進めています。

 風力発電は、多数の部品の製造や輸出入、保管、移送、設置工事からO&Mに至るまで、広い裾野を持つ産業と言われています。本市は、西日本で唯一、港湾法に基づく指定を受けた基地港湾を有する優位性を活かしつつ、上述した響灘の港湾区域における大規模な洋上ウインドファーム事業を呼び水として、国および企業と連携を図りながら4つの機能((1)風車積出拠点、(2)輸出入/移出入拠点、(3)O&M18拠点、(4)産業拠点)を備えた総合拠点の形成に向け、インフラ整備や関連産業の集積を促進します。将来的には響灘の港湾区域に限らず、同一般海域、ひいては九州をはじめ西日本エリア全体の一般海域等の風車の設置やメンテナンスなど風力発電に関わるさまざまなサービスの提供体制の確立を目指しています。

 風力発電関連産業の総合拠点化を進めるうえで、これを支える人材育成・確保が必要となります。そのため、本市ではO&Mをはじめとした関連産業の担い手を安定的に育成、供給するための体制づくりも並行して進めています。具体的には、風力発電について学生に「見る」「触れる」「考える」機会を提供するため、市内の教育機関と風力発電関連企業が意見交換を行う「北九州市風力発電人材育成連絡会」の運営や、次世代を担う学生から経験豊かな世代の方々まで幅広い人材が全国から本市を訪れ、基本的な講義から専門的な議論まで複数の洋上風力発電に係る研修などを集中的に行う「北九州市洋上風力キャンプ×SDGs」など産学官が連携して取り組みを推進しています。

 これらの取り組みを通じて市内の風力発電関連企業に対する学生等の関心を高め、地元への就職を後押しするとともに、全国の洋上風力発電に取り組む自治体などと情報交換を行う場づくりを進め、風力発電関連産業の振興や全体的な底上げにも貢献します。

(つづく)
【新貝 竜也】

※ 北九州市、直方市、行橋市、豊前市、中間市、宮若市、芦屋町、水巻町、岡垣町、遠賀町、小竹町、鞍手町、香春町、苅田町、みやこ町、吉富町、上毛町、築上町の6市12町