(前編はこちら:「バイオマス発電(前)FIT制度はどう変わる?」)
燃料の調達が課題に
バイオマス発電は、2017年4月の改正FIT法による認定条件の強化や17年10月の買取価格の引き下げにより、17年3月に駆け込みで認定件数が増えたが、その後の失効になどより、認定件数は減少した。認定を受けても、さまざまな原因で稼働していないバイオマス発電所も多い。今後の稼働に当たっては、燃料を安定的に調達していくことが重要である。
(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会専務理事・藤江達之氏は「バイオマス発電の燃料となる低質材は価格が低く、燃料のためだけに木を伐り出しても収益が出ないため、製材や合板用に伐採された残りの材が燃料として使われていますが、国内の供給が需要に追い付いていません。また森林整備のために行う間伐では、林道から近くて傾斜が緩く、運びやすい収益化できる場所からは低質材が運び出されますが、条件が悪い場所では山から持ち出されません。山にある低質材を燃料資源として利用できないのは、構造的な問題であり、山で伐り捨てられる材を合理的に集め、そのコストを低減できる体制をつくることが必要です」と話す。

木質バイオマス発電の「一般木質」区分は、臨時的な伐採や製材の端材のほか、輸入ペレットやPKSを燃料とするものであり、発電規模の大きなものが多い。山から新たに木材を運び出すことに比べると調達コストがかからないため、FIT調達価格が24円/kWhと「未利用木材」区分と比べて安い。「認定を受けてもまだ稼働していない発電所が約7割を占めており、今後、ライフサイクルGHGも考慮した燃料の確保が課題となります。」(藤江氏)。
また、「未利用木材」区分は、間伐などで伐り捨てられ、従来は山に残されていた低質の木材を燃料とする。木材を山から運び出すコストが高いため、FIT調達価格が32円または40円/kWhと高い。「FIT制度により、これまで山で放置されていた木材の一部が使われるようになりました。認定を受けた発電所のうち約7割が稼働しています」(藤江氏)。
また、ウッドショックにより木材供給がひっ迫しているが、製材価格が上がっても、チップなどの燃料価格は契約時にすでに取り決めているため上がりにくい。「チップ工場が原料となる木材価格の上昇分との差分を負担することとなれば、ウッドショックが長期化するとチップの供給体制に支障が出ることが懸念されます」(藤江氏)。
国内材については、地元の林業関係者、チップ工場、製材所とつながりがなければ、燃料となる木材の供給を受けることできない。木質バイオマス発電事業計画の認定では、燃料を確実に供給できることが求められるため、今後、認定を受けるときは、これまで以上にバイオマス燃料の安定的な調達が課題になる可能性があるという。

FIT認定では、エネルギーの地産地消や災害対策などを目的とした「地域活用要件」が求められるため、これからは、自治体と連携を取ってエネルギーを地産地消し、他の木材の需要に大きな影響を与えない中小規模の発電所が増えると予想されている。
「国内材のサプライチェーンの再構築を図り、低コストで安定して供給できる体制を築くことが重要であり、関係者の連携や製材と発電を同時に行う林業関連企業の優れた事例を全国に広げていくことが必要です」(藤江氏)。また、脱炭素化に向けて、輸入燃料も含めてバイオマス発電が普及することが大切という。
バイオマス熱利用
エネルギー需要の半分以上は、熱としての利用だ。燃料を燃やして発生するエネルギーを熱として直接利用する方が、電気をつくってから熱に変換するよりも効率が良い。
木質バイオマスを燃料とするボイラーの台数はここ数年頭打ちであるが、今後はバイオマスが熱利用において大きな役割をはたす可能性がある。しかし、石油やガスボイラーを「バイオマスボイラー」に置き換えると、石油やガスボイラーのように出力をタイミング良く調整することができない。そのため、熱を溜める「蓄熱槽」をつくり、温水として熱を利用できる設備が必要だ。藤江氏は「改正地球温暖化対策推進法を契機として、自治体が主導し、民間によるバイオマスボイラーの活用を行うなど、バイオマスエネルギーの地産地消が進んでほしいと感じています」と語った。
(前編はこちら:「バイオマス発電(前)FIT制度はどう変わる?」)
【石井 ゆかり】