(後編はこちら:「バイオマス発電(後)燃料調達が課題に~バイオマス熱利用とは?」)
「ライフサイクルGHG」による認定条件の改正
経済産業省の「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」では、FIT制度によるバイオマス発電の燃料の原料となる作物の栽培から最終的な燃料利用に至るまでの温室効果ガスの総排出量である「ライフサイクルGHG」に関する基準の検討を進めている。遠くから燃料を運ぶことなどにより、化石燃料を多く使えば地球温暖化防止の効果が低くなるため、新規認定案件では、ライフサイクルGHGが一定値以下の場合しか認めない方針だ。一方、既認定案件は排出量の削減努力と情報開示を求める方向だ。今後、ワーキンググループでは、第三者認証によるライフサイクルGHGの確認方法などについて、議論がなされる予定だ。

(クリックで拡大。経済産業省、第1回バイオマス持続可能性ワーキンググループ 資料5より)
EUでは、ライフサイクルGHGが大きいバイオマス発電を新規の支援対象として認めないこととされている。(一社)日本木質バイオマスエネルギー協会専務理事・藤江達之氏は、「ライフサイクルGHGに関しては、EUにおける取扱いの経過を踏まえて検討されています。海外からバイオマス燃料を輸入する場合には、生物多様性や住民の福祉など持続可能性の確保に加え、カーボンニュートラルに向けGHGの基準も満たす必要があります。EUにおいても、すべてのバイオマス発電を否定するものではありません。国内材についてもGHGの基準が適用されることとなり、基準値を上回るケースは少ないと思われるものの、確認手段が課題と考えています」と話す。
FIT制度の動向
バイオマス発電は2022年以降、1万kW以上の発電所が再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)から、フィードインプレミアム(FIP)制度に移行する予定だ。さらに23年度以降早い段階で、FIP制度のみは1,000kW以上まで基準が下げる方向が示されている。「新たな発電所を設置する申請に関しては、FIP制度による運営の見通しが立てることが必要となります」(藤江氏)。
バイオマス発電では、FIT期間中に設備の初期投資を回収しても、FIT期間終了後も発電コストの多くを占める燃料費を低減することが欠かせない。水分が少なく品質の良い燃料を使えば、少ない燃料で発電ができて乾燥工程も必要ないため、発電コストは下がる。日本木質バイオマスエネルギー協会では、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けて、木質バイオマス燃料の品質規格の作成を進めている。
バイオマス発電は、安定して電力を供給できることに加えて、非常時の地域電源の確保やエネルギー地産地消に役立つ。しかし、バイオマス発電の電力は価格が高いため、小売電気事業者がバイオマス発電の特性をどのように評価するかが、バイオマス発電の今後を大きく左右するだろう。
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【石井 ゆかり】